大阪地方裁判所堺支部 平成5年(ワ)673号 判決 1993年12月10日
原告
坪井成啓(X)
右訴訟代理人弁護士
柴山正實
被告
阪南市(Y)
右代表者市長
成子芳昭
右訴訟代理人弁護士
中務嗣治朗
同
浅井隆彦
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた判例
一 原告
1 被告は、原告に対し、金一六〇〇万円及びそのうち金一五〇〇万円に対する平成二年一〇月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 第一項につき仮執行宣言。
二 被告
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 濱崎一夫こと松本弘三(以下「濱崎」という。)の詐欺行為等
大阪府阪南市箱の浦二五七二番二六宅地三二四・六五平方メートル(以下「本件土地」という。)は越智春木(以下「越智」という。)が所有するものであるが、濱崎は本件土地を利用して、以下の経緯で原告から金一五〇〇万円を騙取した。
(一) 平成二年一〇月八日、濱崎は越智の住民登録を大阪市此花区から堺市南向陽町へ無断で移転したうえ、堺市役所から交付を受けた住民票写しを用いて同月一一日、本件土地登記簿上の越智の住所について右虚偽移転にあわせて登記名義人表示変更の登記をした。また、そのころ濱崎は、堺市役所に対し、越智名義の印鑑登録申請をして印鑑登録証明書の交付を受けた。
(二) 濱崎は、被告阪南市(当時は泉南郡阪南町。以下泉南郡阪南町当時を含めて全て「被告阪南市」という。)に対し、当時の大阪府泉南郡阪南町貝掛六三番地シーサイドマンションE棟四二二号に居住していた池田勝(以下「池田」という。)及び同所三二一号に居住する山田守人(以下「山田」という。)両名に無断で、各名義の印鑑登録申請を行ったものであるが、手続は以下のとおりなされた。
(1) 濱崎は、平成二年一〇月八日、被告窓口において池田を名乗り、印鑑及び印鑑登録カードを紛失したとして印鑑登録の申請をした。更にこれに引続いて、山田の代理人高木保男(以下「高木」という。)を名乗り、既登録印鑑の廃止と改印届をしたいとして、山田名義の委任状を持参して同じく印鑑登録の申請をした。
(2) 高木と名乗る人物すなわち濱崎が持参した委任状には「印鑑登録の廃止及び印鑑登録(改印届)の手続きを選任致します。」と記載されていたが、当時山田の印鑑登録はなされていなかったため、印鑑登録手続担当職員(以下「担当職員」という。)は棒線によって委任状の文言を抹消するように指導し新規の印鑑登録の申請に変更させた。また、右委任状には高木の住所は「堺市材木町三丁目二一」と記載されていたが、高木は印鑑登録申請書に堺市を「〓市」と、材木町を「羽木町」あるいは「羽末町」と記載していた。担当職員は、池田及び高木とも身分証明書等で当該本人であると確認できなかったが右各申請を受け付け、池田及び山田に対し印鑑登録申請の有無を照会する文書を郵送した。一方、濱崎は、同月九日、前記シーサイドマンションの一階階段付近で待ち受けて配達された郵便物を受け取り、右照会の回答書にそれぞれ池田あるいは山田名義で署名押印し、池田を名乗って同人名義の回答書を、山田の代理人高木を名乗って山田名義の回答書をそれぞれ窓口へ提出して印鑑登録を済ませた後、印鑑登録証明書の交付申請をした。その際、濱崎が高木と名乗って提出した申請書には、「堺市」が前同様「〓市」と記載されていたが、被告阪南市はいずれに対しも印鑑登録証明書を交付した。
(三) 濱崎は、右のとおり印鑑登録した池田及び山田の各実印と交付された両名の印鑑登録証明書を用いて、権利証に代わる右両名名義の保証書を偽造した。そして、平成二年一〇月一二日、右保証書を利用して越智から濱崎へ売買を原因とする所有権移転登記をした。
(四) 平成二年一〇月一九日、濱崎は原告に対し、濱崎名義の登記済証、印鑑登録証明書及び実印を持参して本件土地を担保に金一五〇〇万円の融資の申込みをしてきたので、原告は濱崎に対し、本件土地について、原告従業員で担当者であった坪井隆弘を抵当権者として被担保債権額金一五〇〇万円とする抵当権を設定し、同年一一月一八日を弁済期として金一五〇〇万を貸与した。
2 原告の損害
原告は、担保がなければ濱崎に金一五〇〇万円を貸与することはなかったものであるが、本件土地が登記簿上濱崎名義となっているうえ、濱崎が同人名義の権利証を所持していたので、被告は濱崎が本件土地を所有していると信じてこれを担保とすることができると考え、同人に右金銭を貸与したものである。
3 被告の責任
(一) 印鑑証明は、不動産取引や金融取引において、本人の同一性、文書の真正及び取引意思の有無等を確認するための重要な手段であるから、印鑑登録証明事務を取り扱う市町村は、印鑑紛失等を理由とする印鑑登録の申請を受理する場合には、虚偽の申請を排除するように慎重に右事務を処理すべき注意義務がある。
印鑑登録の申請に際しては、本人あるいは代理人と申請に来た者との同一性を確認し、代理の場合はその必要性を疎明させ(自治省大臣官房監修の条例ひな型によれば、代理人による場合は委任状のほかに、「登録申請者が自ら申請することができないことを疎明する書面を………提出しなければならない。」(右ひな型四条二項)とされている。)、いずれにおいても、申請書や委任状等の記載を十分調査したうえでそれぞれ申請書を受理すべきである。
また、照会書郵送における回答書指定者と同持参者の同一性の確認に際しては、被告阪南市の印鑑登録及び証明に関する事務処理要領において、「回答書による登録証の交付は、回答書に指定された者と持参した者とが同一人物であることを確認のうえ行う。」(同要領6)とされているのだから、本人の意思確認のため郵送された照会書に対する回答書を持参した者と本人(本人申請の場合)あるいは代理人(代理申請の場合)が同一人物であるか否か確認すべきであるし、更に、被告の印鑑条例施行規則において「登録申請者が、疾病その他止むを得ない事由により自ら当該回答書を持参することができないときは、登録を受けようとする印鑑を押印した委任の旨を証する書面を添えて代理人により持参させることができる。」(三条一項)とされているから、代理人が回答書を持参した場合には、右「やむを得ない事由」があるか否かを調査すべきである。加えて、印鑑登録証の受領についても、代理による場合は代理によらなければならないことを疎明させるべきである(前記ひな型四条二項、六条三項)。
(二) ところが、被告には、本件印鑑登録申請の受理から印鑑登録証明書の発行に至る一連の事務手続において、以下の過失があった。
(1) 池田あるいは高木と名乗る各人物について、本人であるか否か確認できなかったのにこれを受け付けた。
(2) 高木と名乗る人物が印鑑登録の申請をした当時山田の印鑑登録はなされていなかったのに、持参した委任状には「印鑑登録の廃止及び印鑑登録(改印届)の手続きを選任致します。」との文言が存在したり、堺市の住所には「丁目」というものは存在しないのに高木の住所が「堺市材木町三丁目二一」と記載されていたりするなど、委任状の成立の真正について疑念を抱かせる事情が存在した。にもかかわらず、被告阪南市担当職員は漫然とそれを見過ごし、委任状の文言を訂正できるのは委任者だけで受任者には訂正する権限がないにもかかわらず、高木と名乗る人物に対し、委任状の右文言を棒線によって抹消するように指導してこれを受け付けた。
(3) 高木と名乗る人物は印鑑登録申請書に「堺」を「〓」、「材木町」を「羽木町」あるいは「羽末町」と記載するなど、高木との同一性について疑問が存在したにもかかわらず、担当職員は委任状の代理人の記載と印鑑登録申請書のそれを照合せずに申請を受理した。
(4) 高木と名乗る人物は印鑑登録申請及び印鑑登録証の受領に際し、自ら申請あるいは受領できないことを疎明する書面を提出しなかったのに、担当職員は申請を受理し、かつ、登録証を交付した。
(5) 平成二年一〇月一九日、池田本人あるいは山田の代理人高木をそれぞれ名乗る人物が回答書を持参してきた際、担当職員は、持参した者と回答書に指定された者の同一性及び山田が出頭できない事由についていずれも確認をしなかったし、その際、高木を名乗った人物は、印鑑登録証明書の交付申請においても、住所の記載について印鑑登録申請と同様に不自然な記載をしたにもかかわらず、右職員はここでも委任状の記載と照合せず安易に申請を受理して印鑑登録証明書を発行した。
(三) そして、被告阪南市の担当職員が右過失により濱崎に対して印鑑登録証明書を発行したことにより濱崎は本件土地所有権を真実の所有者越智に無断で濱崎名義に移転することが可能となり、原告は濱崎が本件土地所有権を有していなければ金一五〇〇万円を貸与することはなかったのであるから、原告の濱崎に対する金一五〇〇万円の貸与と担当職員の過失は因果関係を有する。また、濱崎の右行為により原告は本件訴訟を提起せざるを得ないことになったところ、担当職員が右過失により濱崎に対して印鑑登録証明書を発行しなければ弁護士費用も負担することはなかったのであるから、これについても担当職員の過失と因果関係がある。
4 まとめ
よって、被告阪南市の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて過失によって違法に原告に損害を与えたことになるから、原告は被告阪南市に対し、国家賠償法一条により金一五〇〇万円及びこれに対する不法行為の損害発生の日である平成二年一〇月一九日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに弁護士費用のうち金一〇〇万円の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1冒頭及び(一)の各事実は不知。
同1(二)冒頭の事実のうち、被告阪南市に対し、池田及び山田各名義の虚偽の印鑑登録申請を行った者が存在したことは認め、その余は不知。
同1(二)(1)の事実のうち、平成二年一〇月八日、被告阪南市の窓口において、池田と名乗る人物が印鑑及び印鑑登録カードを紛失したとして印鑑登録の申請をしたこと、その後山田の代理人高木と名乗る人物が山田名義の委任状を持参して印鑑登録の申請をしたことは認め、その余は否認する。二件の印鑑登録申請の間には他に一件のそれが存在する。
同1(二)(2)の事実のうち、高木が印鑑登録の申請をした当時山田の印鑑登録はなされていなかったこと、高木が示した委任状において同人の住所が「堺市材木町三丁目二一」と記載されていたこと、担当職員は池田及び高木を身分証明書等で本人であると確認できなかったが右各申請を受け付けたこと、右両名に対し印鑑登録申請の有無を照会する文書を郵送したこと、其者が右両名に配達された郵便物を受け取り、照会の回答書にそれぞれ池田あるいは山田名義で署名押印し、池田を名乗って同人名義の回答書を、山田の代理人高木を名乗って山田名義の回答書をそれぞれ被告阪南市へ提出して印鑑登録を済ませ、印鑑登録証明書の交付申請をしたこと、その際、高木と名乗る人物が提出した申請書には「堺市」が「〓市」と記載されていたこと、被告は池田及び山田のいずれに対しても印鑑登録証明書を交付したことは認め、その余は不知。
同1(三)及び(四)の各事実は不知。
2 同2の事実は不知。
3 同3は争う。
印鑑証明が、不動産取引や金融取引において、本人の同一性、文書の真正及び取引意思の有無等を確認するための重要な手段であることに照らし、印鑑登録証明事務を取り扱う市町村は、印鑑紛失等を理由とする印鑑登録の申請を受理する場合には虚偽の申請を排除するように慎重に右事務を処理すべき注意義務があることに異論はない。しかしながら、本人あるいはその意思確認について本件のように簡易書留による照会書郵送方式という信頼性の高い方法が採られている場合、被告において、本件のようにマンションの一階階段付近で郵便配達人を待ち受け、当該郵便物を受け取るなどという巧妙な方法により右方法が潜脱されることまでも予想して対策をたてなければならないとしたら、担当職員が本人宅まで赴いて直接本人あるいはその意思確認を行う必要があるところ、それでは被告住民課窓口係における大量反復的事務を処理することは不可能になる。したがって、担当職員に注意義務違反が存在したか否かについては、登録事務の正確性と迅速性という相反する要請の調和という観点から判断すべきである。
本件において、住居表示上の誤記や誤字は被告住民課における印鑑登録事務において日常茶飯事といってよいほど見受けられるものであるし、委任状文言を代理人が無権限抹消したことについても照会書郵送方式による本人確認で最終的に治癒される瑕疵にすぎない。また、被告の印鑑条例施行規則三条一項後段は規定の体裁からすれば、登録申請者がやむをえない事由で出頭できないと主観的に判断しさえすれば当然に代理人申請が許されるという趣旨と解すべきである。したがって、右を看過したり、やむをえない事由を調査しなかったからといって注意義務違反が存在したとはいえない。
次に、照会書に対する回答書を持参した者はそこに指定された者であると強く推定されるのであるから、原告が主張する被告の印鑑登録及び証明に関する事務処理要領6の規定は本人、代理人のいずれにおいても回答書に記載されている住所、氏名、生年月日を持参者に確認し、年恰好、性別に齟齬がないかを確認せよとの趣旨であると解すべきところ、担当職員は少なくともその程度の確認はして印鑑登録証を交付しているのであるから、この点に注意義務違反は存在しない。
原告がいうところのひな型四条二項及び六条三項が想定している疎明書面は本人が代理人によって申請する理由を書き記す形式のもので適当な理由を容易に挙げることが可能であるため、事務処理上これを要求しても本人出頭を促進させることが期待できないのであるから、被告がこれをみずからの条例や規則に採り入れていないことは理由があり、これに従い担当職員は印鑑登録申請及び印鑑登録証の受領手続において疎明資料を提出させなかったのだから、ここでも注意義務違反は存在しない。
以上のとおり、本件手続における被告担当職員の事務処理に過失は認められないというべきである。
三 抗弁(過失相殺)
仮に過失が認められるとしても、本件土地の担保価値にのみ注目し、濱崎の返済能力を調査することなく漫然と融資を行った点で原告にも相応の過失があるから、原告の全損害について過失相殺すべきである。
四 抗弁に対する認否
争う。
第三 証拠関係
本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 原告が金員を詐取されるに至った経緯
被告阪南市に対し、池田及び山田各名義の虚偽の印鑑登録申請を行った者が存在したこと、平成二年一〇月八日、被告阪南市の窓口において、池田と名乗る人物(以下「自称池田」という。)が印鑑及び印鑑登録カードを紛失したとして印鑑登録の申請をしたこと、その後山田の代理人高木と名乗る人物(以下「自称高木」という。)が山田名義の委任状を持参して印鑑登録の申請をしたこと、自称高木が印鑑登録の申請をした当時山田の印鑑登録はなされていなかったこと、自称高木が示した委任状において同人の住所が「堺市材木町三丁目二一」と記載されていたこと、被告阪南市は自称池田及び同高木を身分証明書等で当該本人であると確認できなかったが右各申請を受け付けたこと、右両名の住所宛に印鑑登録申請の有無を照会する文書を郵送したこと、配達された郵便物が某者に受け取られ、照会の回答書にはそれぞれ池田あるいは山田名義で署名押印がなされ、自称池田が同人名義の回答書を、自称高木が山田名義の回答書をそれぞれ被告阪南市へ提出して印鑑登録を済ませ、印鑑登録証明書の交付申請をしたこと、その際、自称高木が提出した申請書には「堺市」が「〓市」と記載されていたこと、被告阪南市は自称池田及び同高木のいずれに対しても印鑑登録証明書を交付したことは当事者間に争いがない。
そして、〔証拠略〕を総合すると次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
1 本件土地は越智が所有するものであるが、訴外松本弘三ら三名(以下「松本ら」という。)は登記簿上濱崎一夫がそれを購入したかのように偽装しそれを担保に金融業者から金員を騙取しようと企て、本件土地所有名義の移転に必要な越智の実印、印鑑登録証明書、越智と濱崎一夫間の売買契約書、登記済証に代わる保証書を次のとおり用意した。
松本らは、平成二年一〇月八日、越智の住民登録を大阪市此花区から堺市南向陽町へ無断で移転して堺市役所から住民票写しの交付を受け、その後、用意した越智名義の印鑑で印鑑登録申請をして印鑑登録証明書を取得するなどし、越智から濱崎一夫への売買契約書(甲三)を偽造した。そして、右と同時に大阪府泉南郡阪南町貝掛六三番地シーサイドマンションE棟四二二号に居住する池田及び同所三二一号に居住する山田を保証人に仕立てて保証書を偽造することにした。
2 平成二年一〇月八日、まず、松本らのうち一人が自称池田となり、被告阪南市の窓口において、印鑑及び印鑑登録カードを紛失したとして印鑑登録関係申請書(以下「登録申請書」という。)を「改印」にしるしをつけて提出した。被告阪南市の担当職員は「改印」を「印亡失」「証亡失」に記載させ直したうえ、自称池田に対し運転免許証等公共機関発行の写真入りの身分証明書の提示を求めたが、同人はそれを所持しておらず本人確認ができなかった。
その後まもなく、松本らのうち別の一人が山田の代理人自称高木となり、同じく印鑑を紛失したとして登録申請書を「印亡失」にしるしをつけて、偽造した山田作成名義の委任状とともに提出した。委任状の原文は「下記の者を代理人と定め印鑑登録の廃止及び印鑑登録(改印届)の手続きを選任致します。」というものであったので、委任状を書いた者が事前に右の修正をしておいたか、あるいは担当職員の指示により自称高木が「廃止及び印鑑登録(改印届)の」の部分を棒線で消して「印亡失」の文字を書き加えた。そして、担当職員が旧登録番号を調べたところ山田の印鑑登録がなされていなかったため、自称高木に対し、申請書の「印亡失」のしるしを「登録」に修正し委任状の「印亡失」の文言を棒線で抹消するように指導し、その場で新規印鑑登録の申請に変更させた。なお、堺市の住所表示は「丁目」でなく「丁」と表示されているが委任状における高木の住所は「堺市材木町三丁目二一」となっていたうえ、自称高木が登録申請書に記載した住所は「堺市」が「〓市」となっており、また「木」を「〓」と書くなど際立ったくせ字のせいで「材木町」が一見「羽木町」あるいは「羽末町」と読めるものであった。そのうえ、自称高木も身分証明書等により高木本人であると確認できなかったが、担当職員はそのまま申請を受け付けた。
3 右の経緯により担当職員は自称池田及び同高木のそれぞれに対し、本人あるいは本人意思の確認と回答書の持参について説明し、各住所に対し印鑑登録申請の照会をする文書を簡易書留で郵送した。翌九日松本らのうち一名が山田になりすまして前記シーサイドマンションの一階階段付近で待機し、池田の印鑑も預かっているとして両名に配達された右簡易書留を受け取り、自称池田及び松本らのうち残り一名がそれぞれ回答書に池田あるいは山田の各署名押印をした。そして、同日、自称池田及び同高木が回答書を被告阪南市へ提出したので担当職員は前記申請書と回答書の各記載内容を照合したが、問題はなかったのでいずれに対しても印鑑登録証を交付した。その際、自称池田及び同高木は交付された印鑑登録証を提示して印鑑登録証明書の交付を申請した(自称高木は山田名義の「代理人選任届」と題する書面も提出)ので、担当職員は印鑑登録証明書の交付をした。なお、自称高木が提出した印鑑登録証明交付申請書(以下「証明申請書」という。)の高木名義の住所記載は前記登録申請書と同様であったが、担当職員はここでもそれを特に問題とすることはなかった。
4 松本らは堺市役所から交付を受けた越智の住民票写しを用いて、平成二年一〇月一一日、本件土地について所有者越智の登記名義人表示変更(住所変更)の登記をした。そして、印鑑登録した池田及び山田名義の右各実印と交付されたその印鑑登録証明書を用いて登記済証に代わる両名名義の保証書を偽造し、前記1の偽造書面等とともにそれを利用して、平成二年一〇月一二日、越智から濱崎一夫へ売買を原因とする所有権移転登記をした。
5 平成二年一〇月一九日、松本らのうち一名が濱崎一夫を名乗り原告に対し、濱崎名義の登記済証、印鑑登録証明書及び実印を持参して本件土地を担保に金一五〇〇万円の融資の申込みをしてきたので、原告は濱崎に対し、本件土地について原告従業員で担当者であった坪井隆弘を抵当権者として被担保債権額金一五〇〇万円とする抵当権を設定して金一五〇〇万円を貸与した。
二 被告阪南市の印鑑登録手続等
〔証拠略〕によれば、被告阪南市の印鑑登録手続の実際として次の事実を認めることができ、これを覆すに足りる証拠はない。
1 平成二年当時、被告阪南市の印鑑登録事務は阪南町印鑑条例(以下「条例」という。)、同施行規則(以下「規則」という。)及び印鑑登録及び証明に関する事務処理要領(以下「事務処理要領」という。)に基づいて行われていた。それらによれば、まず印鑑登録申請者は、登録申請書に登録を予定する印鑑(以下「登録予定印鑑」という。)を添えて町長に申請し、町長は、その者の氏名、男女の別、生年月日及び住所を住民基本台帳又は外国人登録原票と照合して相違がないことを確認して申請を受理することになっていた(条例三条、規則二条)。そして、条例四条が右申請が登録申請者自身によるときは本人であることの、代理人によるときは本人の意思に基づくことの確認を義務づけていることを受け、規則三条は右確認は登録申請者に対して文書で照会し回答書を持参させて行うこと(以下「照会書郵送方式」という。)を原則としたうえで、登録申請者がやむを得ない事由で持参できなければ委任状を添えて代理人に回答書を持参させることができ、また、登録申請者自身が申請をなすときは、官公署が発行した写真添付の身分証明書等で本人を確認できるとし、照会書郵送方式について事務処理要領5(1)はそれを簡易書留郵便でなすものとしていた。右確認が終了して印鑑登録をしたときは、登録を受けた者あるいは代理人に対して印鑑登録証を交付するが、(条例七条、一四条)、照会書郵送方式によるときは、回答書に指定された者と持参した者とが同一人物であることを確認のうえ登録証を交付するとされていた(事務処理要領6)。
そして、被告阪南市の担当職員は現実に概ね次のとおり登録申請を処理していた。
登録予定印鑑と登録申請書を窓口に提出してきた場合は官公署発行の写真付身分証明書等の提示を求め本人確認をする。それで本人確認ができなかった場合は登録申請者に照会書郵送方式の説明をして帰宅してもらい、同人に対して照会書を簡易書留郵便で郵送する。同時に端末機で住民票を呼び出し登録申請書と照合した後、登録原票に登録予定印鑑を押して右のうち登録番号を除いたものを記入しておく。登録申請者の代理人が登録予定印鑑、登録申請書及び委任状を窓口に提出してきた場合は代理人には照会書郵送方式の説明をして帰宅してもらい本人に対して照会書を簡易書留郵便で郵送する。同時に右申請書と委任状を確認したうえで住民票と登録申請書を照合し、問題がなければ登録原票に登録予定印鑑を押して住所、氏名、生年月日を記入しておく。そして、照会書に対する回答書が持参されたらそれと前記登録申請書の記載を照合し申請者と本人の同一性あるいは代理人による当該申請が本人の意思に基づくことを確認できたら、登録原票に登録番号を記入して印鑑登録証を作成し回答書を持参した者に交付する(身分証明書等でその場で本人確認ができた場合は登録原票に登録予定印鑑を押して住所、氏名、生年月日及び登録番号を一度に記入して直ちに本人に対して印鑑登録証を交付する。)。
2 印鑑登録証明書の交付を受けようとする者(以下「証明書交付申請者」という。)あるいはその代理人は、証明申請書に印鑑登録証を添えて(代理人による場合は委任状も必要)町長に申請し、右証明書は印鑑登録原票に登載されている印影等について印鑑登録原票の謄本として交付するとされており(条例一三条一項、一四条)、担当職員は右に副った運用をしていた。
なお、以上の手続を通して、窓口に来た者が申請書に記載された当該人物であるかについて申請書の内容等から明白に疑問があるような場合(例えば、申請書には昭和四〇年生まれと書かれているのに窓口に来た人は明らかに六〇歳以上に見えるような場合)には、担当職員は質問をしたり訂正を促すなどしていた。
3 被告阪南市の印鑑登録及び証明事務の手続において、印鑑登録をしていないのに印亡失手続をしたりする者は珍しくなく、また、自分が居住する市町村の字を誤って書く人もいないではない。更に相当なくせ字の者も少なくない。
4 被告阪南市の事務処理要領、条例及び規則は、昭和四九年二月一日自治省行政局振興課長から各都道府県総務部長に宛てられた「印鑑登録証明事務処理要領(自治振第一〇号)」、例規としての「印鑑の登録及び証明に関する条例」、「印鑑の登録及び証明に関する条例施行規則」(以下それぞれを順に「事務処理要領準則」、「条例準則」、「規則準則」という。)に準拠して制定されたものである。
5 被告阪南市が平成二年度に処理した印鑑登録件数は二五〇〇件、印鑑登録証明書発行件数は三万四〇〇〇件であり、そのうち、同年一〇月九日の処理件数は前者が一一件で後者が一五七件であった。窓口業務は印鑑登録事務のほかに住民票の交付、戸籍謄抄本の発行等の各事務があり、それらの総処理件数は平成二年一〇月八日の一日間で二八四件、翌九日は三五七件であったところ、これらの業務を六名の窓口係で処理していた。
三 被告阪南市の過失について
右に認定した事実を前提に被告阪南市に過失があったか否かを判断する。
1 印鑑登録証明書は印鑑と一体となって文書の作成名義人の真正や本人の同一性を確認する重要な資料として財産上の取引や登記申請等の公的手続において使用されるものであるから、これが不正に利用され本人が全く関知しない間に重要な財産について処分や取引がなされれば本人を含めた関係者に多大な損害を与えることになる。したがって、印鑑登録事務を行う地方公共団体は本人の意思に基づかない印鑑登録がなされ、かつ、本人以外の者に印鑑登録証明書が交付されることのないように本人の意思確認を確実になしうる手続準則を設ける必要があり、担当職員は右手続に従いつつ申請が本人によることあるいは本人の意思に基づくことに慎重な注意を払うべき職務上の注意義務があるというべきである。しかしながら他方、被告阪南市の印鑑登録及び証明を含めた窓口の全事務処理量並びにそれに対応する人員に照らすと、不正利用を防止しつつも大量の事務を簡便・迅速に処理できる手続にする必要があり、そうしたことが住民の利便に資することは否定できないところであって、右注意義務の具体的内容は、不正利用の防止と事務処理の簡便・迅速化という相反する要領の調和の観点から判断する必要があるというべきである。
被告阪南市の印鑑登録手続は、前記認定のとおり印鑑登録証明は証明書交付申請者が登録時に発行された印鑑登録証を提出すればその印鑑登録原票の印影を複写して原票の謄本として印鑑登録証明書を交付することで行い(いわゆる間接証明方式)簡便・迅速に事務を処理できることを可能にしている反面、印鑑登録においては原則として照会書郵送方式を採用し、かつ、それを簡易書留によることとし、郵送方式によらないことが許される場合を官公署発行かつ写真付の身分証明書等で本人確認ができる場合に限定して本人の同一性あるいは意思の確認について極めて確実性の高い手続を採用している。そして、印鑑登録証明について間接証明方式を採用すると登録印鑑でない印鑑に証明書を交付する誤った証明がなくなるため、印鑑登録証明書の不正利用を企てる者は登録印鑑を所持する必要がありひいては不正な印鑑登録という手段から出発せざるをえなくなることを考えると、本人の同一性あるいは意思の確認を極めて厳格にする反面それ以外の手続を簡便にする被告阪南市の手続は、前記相反する要請を調和させながらも印鑑登録の不正利用を最大限防止しうるもので基本的に相当というべきである。
原告は条例準則四条二項、同六条三項がそれぞれ印鑑登録申請、印鑑登録証の交付について、代理人による場合は本人によることができない旨を疎明する書面の提出を要求しているのに、被告阪南市の手続がそれを要求していないことを問題にするところ、確かに〔証拠略〕によれば条例準則に右内容の規定が存在することが認められるものの、他方、そこで想定している疎明書は本人が代理人によらざるを得ない旨を主観的に記載する程度のもので客観的疎明を要求しているわけではないことも認められ、そのようなものであれば疎明書面を提出させる意義に乏しく、被告阪南市が簡易書留による照会書郵送方式という厳格な手続を採用していることを併せ考えると、条例準則の右規定を同被告の条例及び規則に採用しなかつたことは不相当とはいえない。
右のように被告阪南市が定めている手続準則は前記相反する要請を調和させる相当なものであるから、本件印鑑登録及び証明書交付において被告阪南市の担当職員に職務上の注意義務違反が存在したか否かの判断は、印鑑登録及び証明の各申請において本人の同一性あるいは意思を確認するにつき、阪南町印鑑条例、同規則及び事務処理要領に従った処理をしたか否か、即ちそれらの規定及び制定趣旨に照らして相当な方法による調査等をしたか否かによってなすべきものと解するのが相当である。
2 そこで、自称池田及び同高木のそれぞれの申請に対する担当職員の事務処理について検討する。
(一) まず自称池田の印鑑登録申請について判断する。
(1) 担当職員は身分証明書等で自称池田が本人であると確認できなかったので照会書郵送方式によったものであり、ここまでは条例及び規則に従った処理であるから注意義務違反は存在しない。したがって、本人と確認できなかったのに受け付けたことが注意義務違反のひとつとする原告の主張は理由がない。ところが、回答書の持参については、事務処理要領6が回答書を持参した者とそれに指定された者との同一性を確認したうえで印鑑登録証を交付するように要求しているところ、担当職員は自称池田が持参した回答書と申請書を照合して申請者が本人であったことを確認したのみで積極的に同一性の確認をしたと認めるに足りる証拠はない(前記認定のとおりそもそも被告阪南市では回答書の記載や人物の外見から疑問がある場合に質問等をしている程度のようである。)。しかしながら、被告阪南市では簡易書留によって照会書の郵送が行われ他人が回答書を入手することは極めて困難であるのだから、回答書を持参した者がそれに指定された者であると強く推定することができ、そうとすれば事務処理要領6はせいぜいできるだけ回答書記載の住所、氏名、生年月日を口頭で確認したり、性別や年恰好と記載とを照合して疑問が生じたときは質問等で確認するように努めるなど最後に念のため注意を促す程度の規定であると解すべきである。原告は身分証明書等で本人確認をすべきであったと主張するが、そうした方法で確認できないからこそ照会書郵送方式を採ったのであるし、右によればそもそも照会書郵送方式を採る意味がなくなるといえるから相当でない。
そうすると、回答書を持参した者が池田でないと疑わせる事情がこれといって存在しなかった本件においては、担当職員が回答書を持参した者に対し積極的に本人確認をしなかったとしても、自称池田の本人確認につき条例、同規則及び事務処理要領に従った相当な方法による調査の範囲内というべきであるから担当職員に注意義務違反は認められないというべきである。仮に回答書記載の住所、氏名及び生年月日の口頭確認すらしなかったことをもって相当な方法による調査を怠ったものと認める余地がないではないにしても、本件印鑑登録申請は周到に準備されたものであることが窺えるから自称池田が右確認に対して容易に答えたであろうことは想像に難くなく、そうとすれば右確認をしたとしても自称池田の印鑑登録を防止できたとは思われず、その他右確認をすればそれを防止できたと認めるに足りる証拠はない。したがって、仮に注意義務違反が存在したとしても本件損害の発生と因果関係がないというべきである。
(2) 印鑑登録証明書交付申請についても被告阪南市が設定した前記手続に従って処理しているのであるから、担当職員に注意義務違反は認められないというべきである。
(二) 次に自称高木が山田の代理人としてなした印鑑登録申請について判断する。
(1) 自称高木は山田の印鑑登録がないのに印亡失手続を申請してきたこと、担当職員は山田作成名義の委任状について訂正権限のない自称高木に対し少なくとも印亡失から登録にその文言の訂正をさせて処理したこと、身分証明書等により自称高木が代理人高木本人であると確認できず、かつ、委任状及び登録申請書の高木の住所表示に誤記ないし誤字が存在したのに特に問題とすることなく申請を受け付けたこと、自称高木が持参した回答書にも同様の誤字が存在したがことさら確認をすることもなく印鑑登録証を交付したこと等は前記認定のとおりである。
まず、登録申請が本人による場合において、申請人を本人と確認できなくともそれを受け付け、照会書郵送方式で本人であることの確認をすることになっていること前記のとおりであるから、担当職員が自称高木を代理人高木本人であると確認できなかったのに受け付けたことをもって注意義務違反にあたるとするのが相当でないことは明らかである。
仮に、登録申請書における代理人の署名や委任状の記載について、被告阪南市の条例、規則及び事務処理要領は特に注意ないし確認を義務付けていない。そのうえ、代理人によって印鑑登録申請がなされた場合、本人の意思確認は必ず簡易書留による照会書郵送方式によることになっているのだから、登録申請書における代理人の署名や委任状の審査においては印鑑登録制度の不正利用防止の要請よりも、むしろ他方の要請である手続の簡易・迅速化の観点から担当職員の注意義務を判断すべきであり、そうとすれば、担当職員は右審査に関して明白に不自然なことが窺える場合に限り質問等による一応の調査をすべき注意義務があるというべきである。
そこで、担当職員の右注意義務違反の有無を判断するに、一般論からいうと自分が印鑑登録していることを忘れたり自分が居住する市町村の字を誤ることがありうるのか疑問がないではないが、印鑑登録事務においてはそれらのことが起こりうること前認定のとおりである。自称高木が登録申請書に記載した町名は際立ったくせ字ではあるものの、委任状記載の町名と対比すれば正しく読むことは十分可能である。また、堺市の住所表示が「丁目」でなく「丁」であることが阪南市の職員にとって公知の事実であるとは思われないし、自称高木が委任状の文言を無権限で抹消したといっても照会書郵送によって最終的に本人の意思を確認できるのだから、ことさら注意が必要な問題とはいいがたい(また、仮に委任者に文言を訂正させて再び持参するように指導したとしても、本件のような事例では、委任者の役割を分担する者が訂正をして受任者に持参させるにすぎなくなることは容易に予想しうることである。)したがって、担当職員が前記の各事情が存在したにもかかわらず質問等によって積極的に調査をせずに登録申請を受け付けたとしても、注意義務に違反したとはいえないというべきである。
(2) また、事務処理要領6が存在するにもかかわらず、回答書が持参されたとき自称高木が高木本人であることを特に積極的に確認していないことは自称池田の手続と同様であるが、事務処理要領6の趣旨は前記のとおりと解すべきであるから、自称池田の手続と同じく右を捉えて担当職員に注意義務違反が存在したとはいえないし、仮に住所、氏名及び生年月日すら確認しなかったことをもって注意義務違反と捉えたとしても、それに対する自称高木の対応は自称池田において予測されるものと同様と考えられるから、本件損害と因果関係がないというべきである。
なお、原告は規則三条一項後段が「登録申請者が、疾病その他やむを得ない事由により自ら当該回答書を持参することができないときは、…代理人により持参させることができる。」と規定しているのだから、担当職員には本人に「疾病その他やむを得ない事由」があるか否か調べる注意義務が存在し、それに違反した過失があると主張するが、規定の体裁からすれば「疾病その他やむを得ない事由」は登録申請者が主観的に判断できるかのように読めること、簡易書留による照会書郵送方式のもとでは回答書を本人が記載している可能性が極めて高くそれにもかかわらず代理人が持参していること自体「疾病その他やむを得ない事由」の存在を強く推認せしめること、右事由の有無について厳密な調査を要求すると手続の簡易・迅速化の要請に反することになること等を総合すると、規則の右規定が存在するからといって担当職員には本人に「疾病その他やむを得ない事由」が存在することを積極的に調査すべき注意義務はないというべきである。よって、原告の主張は理由がない。
(3) 印鑑登録証明書交付申請についても担当職員は被告阪南市が設定した前記手続に従って処理しているのであるから、担当職員に注意義務違反は認められないというべきである。
もっとも原告は、自称高木は右においても堺市を「〓市」と記載したのであるから山田が自称高木に登録証明書交付を真に委任していたか否か更に調査すべきであったと主張するが、右証明書交付申請は自称高木が回答書を持参して山田の代理人として印鑑登録証を交付された直後にその登録証及び山田作成名義の委任状を提示してなされたものであるうえ、委任状と照合すれば(あるいは照合するまでもなく)「〓市」が堺市のことであるのは明白であるから、印鑑登録証明書の交付手続が間接証明方式により元来簡易・迅速化されていることを併せ考えると、担当職員が自称高木について更に調査することなく申請を受け付けて印鑑登録証を交付したとしても注意義務に反するものではないというべきである。したがって、原告の右主張は理由がない。
四 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用については民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 糟谷邦彦 裁判官 森野俊彦 山崎秀尚)